謎の商人

昨今の金融不安、ヤバすぎますよね。


毎日ニュースを欠かさず見ているのですが、企業は資金繰りが悪化し、この危機からの脱却に必死です。そして金融資産として所有していた株を売却する動きを見せている企業を目にして、僕もなんとなく触発されてしまいました。


僕も資産を売却しよう!


今年は一気に低所得者層となり、所得税もほとんど払っていない僕なので気分も高まります。売れそうな物を集めてみると、任天堂DSやゲームボーイアドバンスなどが出てきました。ゲームはあまりやらないのに購入し、一時期だけ遊んでたものだったので、売りに行くことにしました。


とりあえずうちの近くに2つほど中古ゲームを買い取ってくれる店があります。それぞれ見積もりを出してもらい、高い方で売ることにしました。しかし売るには印鑑が必要だと言われ、仕方なくいったん家に戻り再び店に向かっているとき、ある軽トラが目に入りました。


「御不用になった家電製品、プレイステーションなど、ございましたらお気軽にお声をおかけ下さい」


スピーカーから聞こえたこの言葉に反応した僕は、ゲームが売れるんじゃないかと思ってその軽トラに近寄り、声をかけました。さっきの店より高く売れたら儲けものです。


「ゲーム売れるんですか?」


すると乗っていた男の人はなんだかよくわからない反応をしました。答えはイエスかノーかしかないはずなのに。聞こえにくかったのかと思ってもう一度言ってみると彼は言いました。


「あの、僕が欲しいんですけど。」


要するに、商売とは関係なしに個人的に僕からゲームを買いたいということでした。予想外の展開です。でも僕は相手が誰であろうと高く売れればそれに越したことはありません。話を聞いていると、彼はどうやら相当のゲーム好きみたいで、妙に僕に好感を持ってくれているようでした。とりあえず僕は本体しか持っていなかったのですが、彼はソフトが安く手に入るならば買うかもしれないということだったので、近くの中古ゲームショップに行ってソフトを見てみることにしました。平日の昼間、かなり自由な職業のようです。


車と自転車でそれぞれ店に着くと、中に入って二人で値段をチェックしました。さっき会ったばかりなのに変な感じですが、傍から見ると友達二人が普通にゲームを買いに来たようにしか見えなかったと思います。それくらい違和感なく僕らは接していました。


残念ながらソフトの値段が彼の許容範囲より高かったので、二人の間での取引は断念したのですが、彼はさすがにゲーム好きなだけあって、僕の知らないゲームショップをいくつか教えてくれました。どの店員だと高く見積もってくれるとか、細かい有益情報も盛りだくさんでした。他にも、今彼がやってる仕事が円高のせいで中古品の輸出がうまくできなくて、そろそろちゃんとした仕事を探さないと…みたいな話もしたりして、最後は電話番号をもらって別れました。


その後僕は彼に教えてもらた店をあたり、なんと僕がさっき見積もってもらった額より1500円も高い金額でゲームを買い取ってもらうことに成功しました。それにしても、なんとも奇妙な体験をした一日でした。