ALL #35

ALL #34 - 日記


外泊を終えると、次の日からまた治療が始まった。地固め療法2回目の2週目の治療。2週前にやったのと同じメソトレキセートなどを使った治療を行った。もちろん治療だから嫌なことは嫌だけど、一度経験しているのでまだ気は楽だった。その後の副作用なども、特に1回目と大きく変わりはなかったし。


そしてまた落ち着いてきた頃に、ある出来事があった。


僕は4人部屋にいて、他の3人も同じような病気だった。みんな長い入院生活を強いられるし、これまで約一か月続いてきたこの環境がまだまだ続くものだと思っていた。だけど突然、部屋の中で一番入院生活が長かったおじさんが退院することになった。突然というのはただ僕が知らなかっただけで、そのおじさんは予定の白血病の治療をちゃんと半年行い、予定通りに退院したのだった。僕があまり部屋の人と話をしてなかったせいなんだけど、このことを知ったのはホントに退院の数日前だった。


僕も約半年の入院が予定されているけど、今はまだその半分も過ぎていない。自分が退院するときのことなんてほとんど考えていなかったので、半年も入院して治療を行い、無事退院するというのがとてもすごいことに思えた。僕がまだなんともなかった頃に発病し、僕が発病した頃はもう治療の中盤で、今はもう退院。退院後は当然家に帰って生活できる。もちろん、今発病して担ぎこまれた人もいるし、そういう人たちが集まってる病棟だから当たり前なんだけど。


それと同時に僕は考えた。その人が退院するということは、その人がいた窓側のベッドが空くということ。いったいそこには誰が入るのだろうと。


当然僕はそこに移動したいけど、部屋にはもう一人廊下側のベッドの患者がいる。その人の方が僕より先にこの部屋に来ているけど、先に来ているからって優先的に窓側に行けるというのは正しいとは思わない。だけど僕が出し抜いて看護師に頼んで移動してしまうというのはひどい話だしそんなことはしたくない。僕は話し合いで決めようと考えた。


しかしそれは甘かった。


僕がどこかに行ってフラフラしてるうちに、そのおじさんは移動を完了してしまっていた…。おじさんは「明るい」「明るい」を連発し、非常に満足げだった。僕はまたもや理不尽さを感じていたが、もう荷物も含め完全に移動してしまっていたのでなす術がなかった。


その後そのおじさんと話す機会もあったけど、順番に窓側に行くのが当然だと思っている様子だったし、僕に対して申し訳ないという気持ちもまったく持っていなかった。でも別に嫌な人じゃないし、奥さんにお菓子をもらったりもしてそこそこ仲良くもなっていたので我慢することにした。どちらにしてもどちらか一人しか窓際には行けない。誰かが我慢しなければならなくて、それが僕だというだけのことだ。こうして僕は窓際に移動するチャンスを逸した。


まあでも仕方ない。僕は前回と同様、白血球がそれほど減らなかったので、外泊が許された。骨髄穿刺も行い問題なしだったので、外泊から帰ったら地固め療法3回目を開始することになった。