ALL #36

ALL #35 - 日記


大部屋に来てから1ヶ月。だいぶ部屋の人たちとも仲良くなってきた。特に年齢的に、20代の男の人とは何かと話をした。


入院患者はいろんなことをして退屈しのぎをしているけれど、その彼が、PSPを買ったと言って見せてくれた。外に出られないからネットショッピングで買ったらしく、僕の知ってるソフトもあった。


それに影響された僕は、外泊に出たときゲームショップをのぞいてみた。僕はあまりゲームをしないけれど、同部屋の彼が持っているゲームの中に競馬のゲームがあって、複数の人が別々に育てた馬で競走したりできるシステムがあるので買ってもいいなと思っていたからだ。お互いの暇つぶしにもなるし、それを通じて彼ともっと仲良くなれるかもしれないし。でも思ったより値段が高かったこともあって、購入を保留することにした。買うかどうかは次の外泊まで考えることにして。


そして僕はいつものように外泊の期間を終え、次の治療が始まる前の日の夜に病院へ戻ってきた。いつものようにナースステーションに声をかけ、自分の病室へ向かった。そして病室に入ったとき、これまでと違う光景にハッとした。


彼がいない!


僕の隣は彼で、いつもカーテンが閉められていた。でも今日はカーテンが開いていて、棚やロッカーがはきれいに片づけられ、ベッドには真っ白なシーツがかけられていた。僕はしばらく呆然とした。


ほどなくして担当の看護師がやってきたので、すぐに聞いてみた。


「個人情報もあるからあんまり言えへんねんけど、骨髄移植をすることになったから個室に移動することになったんです。」


僕はそれを聞いてホッとした。生きてるんだ。


僕のいる病棟には重い病気の人が多いし、ちょっと前まで元気でも、突然病状が悪化して死んでしまう場合もある。以前には、別の部屋でそういうことがあって、家族が泣き叫ぶ声が病棟中響き渡ったことがあった。その時はちょうど食事の時間だったけれど、さすがにご飯を食べる手は止まってしまった。


でも彼はそうじゃなくて良かった。実は以前から、今の治療で効果があまり出ないようだったら移植をするかもしれないという話は聞いていた。なかなか治療がうまくいかない状況を気丈に話してくれたけど、彼は笑顔の奥に不安な気持ちをいつも覗かせていた。ときにはすごく苦しそうな時もあり、カーテンを隔てて横に寝ている僕も心配になることが何度かあった。今、移植を前にしてどんな気持ちで過ごしているのだろう。