ALL #28

ALL #27 - 日記


僕はおしゃべりでもないし、すぐに人と打ち解けられる方でもない。初対面の人は苦手だし、挨拶だってなかなかできない。だから、用のある看護師さんや医師などのスタッフとはいろいろ話すけど、他の患者さんとはほとんど話すことはない。今まで個室にいたのだから尚更だ。


でも個室にいた頃から、廊下ですれ違ったりする度に元気よく挨拶してくれる患者が一人だけいた。おそらく彼は20代で、年配の人が多いこの病棟では目立つ存在だった。彼がなぜ入院しているのかは全く知らないが、僕が入院する前からいたようなので、何か重い病気なのだと思う。若いのに大変だけど、その点では僕もあまり人のことは言えない。でも彼はいつも気持ちのよい挨拶をしてくれたし、他の患者さんや看護師さんとも仲がいいようだった。彼は礼儀正しく、彼から声をかけられると、僕も自然と笑顔で挨拶できた。


嬉しいことに、今度入った新しい部屋では、彼と隣のベッドになった。僕も彼も、普段はカーテンを閉めていたので、隣とはいえそんなに顔は合わせなかったけど、新しい部屋に来てからしばらくして、彼と話す機会があった。


彼とは挨拶以外で話すのは初めてだったけど、とても好意的に接してくれた。お互いの病気のことも話した。この部屋の4人の患者のうち僕を含めた3人が白血病だったけど、彼だけは違った。一度聞いただけではよくわからなかったけど、ウイルス性の疾患らしく、なんとなく白血病よりタチが悪いような印象を受けた。


発病したときは、何日も40℃以上の熱が出て下がらないばかりか、原因がわからなかったので本当に死にかけたらしいけど、僕の主治医でもある今の先生が原因を見つけてくれて一命を取り留めたとのことだった。この病院に来てもう4ヶ月になるけど、一度も外に出たことがないと言っていた。僕は1ヶ月もの間外泊ができなくてつらかったけど、彼はその比ではない。


僕はひとしきり彼と話した。彼は明るく、病院のことをいろいろ教えてくれたりした。彼も僕もすぐに治る病気ではないので、これからしばらくお付き合いができる人ができたと思うと嬉しかった。同室の他の2人は60台前後で歳は離れていたが、気をつかってくれて、悪くない感じの人たちだった。「いろいろクセのある人がいるけど、この部屋はいいよ」と言う看護師さんも何人かいた。


そんな感じで、数日もすると大部屋の感じが大体つかめてきた。


僕は骨髄抑制が終わったので、週明けに予定されている骨髄検査で問題がなければ、次のクールの治療まで、再び外泊できることになった。僕は体力づくりに力を注いだ。