ALL #24

ALL #23 - 日記


2日目、3日目も、髄液注射以外は初日と同様の治療を行った。治療は嫌だけど、3日で終わると思うと嬉しい。


今回の治療ではデカドロンで顔がむくみ、体重も増え気味になった。お腹の皮膚が張って痛い気もする。食欲も増すと言われたけど、もともと食欲は旺盛なのでそこはよくわからない。10日ほどすると例によって骨髄抑制が始まり、白血球数は500/μLを下回る日が続いた。白血球を増やすために毎日夕方グランを注射した。


他にも副作用は出たが、さほどでもないように感じた。でもこれはたぶんただの錯覚。もちろん手のしびれや吐き気、頭痛などいろいろあるけど、寛解導入療法時のそれと比べれば程度は小さいので。だから1日が暇に思えることも増えた。


そんな頃、いつもはその日の担当看護師が一人でやってくるのに、見慣れない人を連れてくるようになった。真新しい白衣を着た新人の看護師さんだ。4月も半ばに入り、実戦に配備され始めたらしい。


新人の看護師さんは何人かいるらしかったけど、初めの頃は先輩の仕事を見ているだけのことも多く、話もしないのであまり覚えられなかった。僕はいろんなことを体験させてあげることを頼まれることが多かったように思う。シーツ交換から始まり、血圧を測ったり、採血をしたり。特に採血なんかは新人にさせたくないという患者もいるらしいのだけど、僕は頼みやすいみたいだった。


でもそれは僕が、新人さんたちの様子をとても心地よく思っていたからでもある。どんなことでも最初は初めてだし、なるべくそういうことには協力したい。社会人に成り立てで、初めて現場で働く彼女たちは真剣そのもの。僕はなるべく彼女たちを緊張させないように和やかに話をして、失敗しても大丈夫だよという雰囲気を作った。うまくいってホッとしている彼女たちを見ていると、僕も嬉しかった。


最初のうちは、先輩が常に目を光らせていたので、彼女たちはとても緊張していた。重要なところが終わって、あとは新人でもできるからと先輩が部屋から去った後に、彼女たちがホッとした表情で「緊張した〜」などと話してくれるのはとても楽しかった。


看護師というのは医療のプロであり、患者である僕たちと接するにおいても、常にプライドを持っているように思う。もちろん優しく接してくれるが、次々と入ってくる患者の疑問にはしっかりと対処し、指導する立場にあるのだから当然だ。でも新人の場合は少し事情が異なる。


立場は同じ看護師でも、彼女たちからすると、僕は自分が働く前からここにいた人なので、自分が働いている病棟に新しく入ってきた患者という感じとは少し違うのかもしれない。医療行為をしているときはともかく、看護師と患者はどうでもいい世間話をする時間も多い。そんなとき、新人の看護師さんたちは、先輩の看護師さんたちとはちょっと違った顔を見せてくれる。なんというか、「看護師と患者」というのを感じさせない何かがある。もしかしたら、彼女たちも、自分が入社した後に新しく入ってきた患者に対しては、また違ったのかもしれない。だから僕は3月に入院して少しラッキーだったようにも思った。そういった触れ合いがあることが、自分が入院患者という特殊な状態であることを忘れさせてくれるような気がしたから。