ALL #23

ALL #22 - 日記


入院してから1ヶ月と少し。寛解導入に成功し、次からは白血病細胞を更に減らすための地固め療法が始まる。地固め療法は、およそ1ヶ月のコースを5回行う予定で、それぞれまた骨髄抑制が伴い、それが終わったら次のコースに進むという段取り。


1回目の今回は、投薬自体は3日間。キロサイドという薬を1日2回、3時間ずつと、ラステッドとデカドロンを1日1時間ずつ。そして今回初めて髄液注射というものを行わなければならない。


急性リンパ性白血病では、白血病細胞が脳や脊髄などの中枢神経に入り込みやすいことから、脊髄液の中に直接抗がん剤を投与する必要がある。脊髄液は脳や脊髄の周囲を循環しており、そこに注射針を入れるのだから、ある意味最も怖い治療かもしれない。脊髄液に関しては、最近、脳脊髄液減少症の治療でも少し耳にするようになった。脳脊髄液減少症では、なんらかの原因で脊髄液が漏れるようになり、脊髄液に浮かんでいる脳が通常の位置より低くなって、頭痛などを引き起こす。自身の血液を凝固させることによって漏れを防ぐブラッドパッチという方法が注目されているが、脊髄液のところまで針を入れるという点で、髄液注射もこれに似ている。


朝食を終えると、まず吐き気止め。結膜炎の副作用の可能性があるということで、投薬中はフルメトロンを1日4回点眼する。その後次々と抗がん剤がつながれ、体の中に入っていく。これをしながら、午後からは髄液注射を行う。


まずベッドに横になり、エビのように背中を丸くする。脊髄液まで針を到達させるには、背骨と背骨の間の狭いところを通す必要がある。普通に背筋を伸ばしていたのでは隙間がないのでこのようにする。麻酔をして、腰の辺りの背骨と背骨の間から針を入れる。なんとも言えない緊張感と痛みが走る。実際に何が行われているかを自分で見ることはできない。そして体勢が整うと、メソトレキセートとデカドロンをを注入する。


「ちょっとしびれるような感じがするかもしれません。」


そう言われた直後、鈍い痛みが腰と右足に走った。僕はこの痛みには危険を感じた。これは長く耐えられる痛みではない。顔をしかめて数秒、投薬は終わった。少しほっとしたが、その後もしばらく痛みは続き、数分はとても嫌な感じだった。どうして右足に痛みが走ったのかもよくわからなかったが、神経がたくさん入っているところなので、そういうこともありますと言われた。頭で考えても、体で感じても、どちらにしても非常に嫌な体験だった。


終了後は1時間の安静。デリケートな部分なので、頭痛などが残る場合があるとのことだった。怖い。一応、その後頭痛などが残ることはなかった。


そしてその間に、赤血球の輸血もした。今日の採血でヘモグロビンの値が下がっていたから。夜21時からは、今日2回目のキロサイドを3時間点滴した。この日は体にいろんなものを入れた。特に体調が悪くなったことなどはなかったが、とても嫌なものだった。