ALL #21

ALL #20 - 日記


家に入ると、そこはほぼ1ヶ月前のままだった。


1ヶ月前。僕は背中の痛みを感じて、とりあえず近くの病院へ朝一番で行った。異常な状態だとはわかっていたけど、まさかそれきり家に帰ることができなくなるとは考えていなかった。


家に入って最初に気付いたことは、鼻をつく臭いだった。水道を長い間使っていなかったので、水が嫌な臭いを放っていた。僕は窓を全開にし、家中の水道をしばらく流しっぱなしにした。台所、風呂、トイレ、洗面所…。臭いは少しはましになった。


それが終わると、リビングにグタッと横になり、テレビをつけた。久しぶりに外を歩いてかなり疲れていた。まさか感染したとは思わないが、体温を測ると37℃台だったので体を休めた。1ヶ月前に録画予約しておいた番組が録画されていて、それを見るのがなんだか奇妙で面白かった。


僕はこの外泊をとても楽しみにしていた。だからいろんな人に声をかけて、会う約束をしていた。見舞いに来てくれるのも嬉しいけど、でもやっぱり対等な立場で普通に店で食事をしながら話をするのが楽しいから。この日の夜は、家のすぐ近くの店に、近所に住む人たちが来てくれて、とても辛いカレーを食べながら楽しい時間を過ごした。


翌日。


久しぶりの家での睡眠から目覚めると、僕はコンビニにカツサンドを買いに行き、熱くて濃いコーヒーを淹れた。病院で朝食を食べながら、サンドウィッチとコーヒーを食べたいとずっと思っていた。パン屋さんのサンドウィッチじゃないけど、物凄くおいしく感じた。


お腹を満たすと、僕は歯医者に向かった。実は入院する前、僕は歯医者に通っていた。そのときは、歯の型をとり、仮の詰め物をして次回ちゃんとした詰め物を入れる予定だった。でも入院で歯医者に行けなくなり、ずっと仮の詰め物で過ごしていたのだ。外泊前、歯医者に電話をすると、予約でいっぱいだから2週間後くらいでないと無理だと言われたけど、事情を話してなんとか合間に対処してもらえることになった。


「確認のため、今使っているお薬を教えてもらえますか?」
「え…と、物凄くたくさん使ってるんですけど…あの…白血病の治療のための薬です。」


バンダナを巻いた僕はそんなやりとりをしつつ、歯を詰めてもらった。


それが終わると、さっき朝食をとったばかりなのにもうお腹がすいてきた。まだ11時にもなっていない。僕は少し時間を潰した後、開店したばかりのラーメン屋に入った。まだ客は僕一人しかいなかったけど、人ごみを避ける意味でもちょうどいい。


チャーハンセットのラーメン大盛りとビールを注文し、あっという間に食べてしまった。病院食では考えられないくらいおいしい。僕はチャーハンを追加注文したが、店員には「お持ち帰りですか?」と言われた。もちろん店で全部食べた。そして帰りにコンビニでプリンを買って帰り、それも家で食べた。


満足感に浸ってしばらく休んだ後、シャワーを浴びてから、軽い筋肉痛の足で病院へ向かった。