他人の会話

会話とは対象とする相手との間で言葉を伝え合うこと。


しかし壁に耳あり障子に目あり。ときとして、意図しない相手に対して言葉を伝えていることもあります。中には盗み聞きをする人もいますが、今回はまったく害もなく僕に最近聞こえてきた会話をいくつかご紹介します。


「なんでエプロンこんなとこにあるんやろ。」


これは僕が何かの用事で近くの店に行ったときのこと。僕は買い物を終えたものの、せっかく来たので店内をブラブラしていました。適当に歩いているとそこは寝具コーナー。布団や枕などが並べられていました。そんなときに聞こえてきたこの言葉。振り返ると店員同士が陳列作業をしながら話していました。


僕はそれを聞いたとき、エプロンというのはどこに置くべきなのかしばし考えました。エプロンというのは主に料理をするときに身につけるもの。でもフライパンと並べて売るのはなんだか変な感じ。考えを変えると、エプロンというのは身につけるものなのだから、服と一緒に売るという手があります。でも洋服売り場に売ってるイメージはありません。一体エプロンはどこに置けばいいのか。考えてみると、自分がエプロンを買おうと思ったとして、どこに行けばいいのか。少なくとも寝具売り場に行こうとは思いません。おそらく担当の責任者が寝具売り場に置くことを決めたのでしょうが、それに納得のいっていない部下の気持ちを垣間見てしまいました。


「お先に、とか言うやろ普通は。」


僕はそのとき自転車を押しながら、自転車置き場を進んでいました。自転車がたくさん置かれていて通路は狭く、向こうから来た人とすれ違うためにはどちらかが止まらなくてはいけません。僕の前を進んでいた人が対向の人とすれ違ったのですが、そのとき対向の夫婦は道を譲ったようです。そのすれ違いが終わった後に聞こえてきたこの言葉。奥さんが小声でだんなに同意を求めていました。


僕もきっとそういうことをしているし、何か言ったとしても聞こえてないことが多いので、こんな風に思われているのかと自分のことのように思いました。でも僕が譲ったときも何も言わない人もいるけど僕はなんとも思ってないとも思いました。でも言われた方が気持ちはいい。でも一番驚いたのは、品の良さそうな奥さんが、結構陰ではいろいろ言ってるんだということに気付いたことでした。


「なんで雨って降るんやろ。」


ある小雨の日。たまたまどこかの店の駐輪場で、自転車でどこかへ行くために傘を用意していた女子高生たちから聞こえてきました。


う〜ん、深いところをつかれてしまいました。僕は考えました。雨というのは降るから雨と呼ばれるわけであって、降らなければそれはただの水。よって「どうして雨が降るのか」という質問はナンセンス…でもたぶん疑問はそれではない。


雨というのは太陽や月では降りません。水が液体と気体との間の変化を繰り返す状態が絶えず繰り返される状況においてのみ起こる現象。地球では自転や潮の満ち引き、海流など様々な要因によってそういった状況が起こり、その結果、たまたま今僕たちの頭上で大気中にあった雲から水が降ってきているのだ。うんこれだ。そう思って女子高生を見ると、彼女たちはすっかり気分を変えて屋台のたこ焼き屋で順番が来るのを待っていました。


ということで世間のみなさん、気軽に僕を惑わすのはもうやめて下さい。