クローザー

野球の解説者って、元野球選手だったら誰でもできるものでしょうか。


今年も野球のシーズンが始まり、アメリカのメジャーリーグも開幕しました。今日たまたまカブスブリュワーズという試合がやっていたので見てました。特にどちらを応援するでもないのですが、福留選手がカブスに移籍したことで、今まであまり見なかったチームを見ることができます。まあそれはいいのですが。


カブスの本拠地シカゴでの試合なので、ブリュワーズ先攻で始まり、試合は8回まで終わって0対0。緊迫した投手戦となりました。で、9回の表ブリュワーズの攻撃。マウンドにはカブスのクローザーが上がりました。クローザーとは日本で言う守護神、抑えのエースのことです。そのとき、実況アナウンサーが「カブスはクローザーを出してきましたが…」と解説者に振ったところ、解説者は言いました。


「少し早すぎる気もしますが…。」


僕は苛立ちを隠せませんでした。今に始まったことではありません。メジャーリーグの試合の解説でこういう発言をしばしば耳にします。野球の解説者が野球をわかっていないのです。


今やクローザー全盛期。かつてはチームのいい投手はみな先発投手という時代もありましたが、もはやそれは昔の話。今では日本でもアメリカでもチームに必ずクローザーがいて、しかもそのクローザーたちは素晴らしい球を投げます。その役割は高く評価され、高額の年俸が支払われる花形選手が目白押し。日本で言うと、阪神の藤川投手や、中日の岩瀬投手が有名です。


そんなにいい投手がいるなら毎試合投げさせればいいじゃないかと思いますが、野球というのは年に100試合以上をこなさないといけないので、毎試合投げると肩が壊れてしまいます。なのでクローザーは、終盤にリードしたとき、そのリードを守りきるために最終回を任されることが専らです。大量リードした、あるいは大量リードされた試合ではあまり登場しません。そんなときに使って、いざというとき疲れて使えなかったらもったいないですから。でもきっとこれが誤解のもとなのでしょう。つまり「クローザーは勝ち試合で最後に投げる投手」という誤解です。


野球というのは得点をよりたくさんとった方が勝ち。得点というのは整数であり、またバスケットボールのように100点以上点が入ったりすることはまずないので、同点という事態がよく起こります。通常は9回で試合は終わりますが、同点のときは決着がつくまで延長します(日本は確か延長は12回までだけどメジャーは決着がつくまで)。


ここで「クローザーは勝ち試合で最後に投げる投手」という考え方を持っていたなら、当然クローザーは登場しません。もちろん、先攻のチームは、表の回で得点を奪ったその裏にクローザーを使えばいいのですが、後攻のチームは得点を奪った瞬間サヨナラ勝ちなので、やはりクローザーは登場しません。でもこういうクローザーの使い方をしているチームがあったとしたら、そのチームは勝ち星が少なくなることでしょう。


考えて見ればわかります。8回終わって同点というのはどちらのチームにとってもあと一歩で勝利という状態。絶対に点をとられたくないシチュエーションです。もう自分たちが勝つならサヨナラ勝ちしかない状態になった瞬間、最後に一番いい投手を使うという概念はなくなるはずです。なぜなら、最後がいつだかわからないからです。


こんな大事なシチュエーションで、リードしてないからクローザーは使わないなんてバカな話はありません。このシチュエーションになった瞬間、考え方は「一番いい投手から順番に使う」に変わるのが当然です。クローザーを温存して、クローザーより成績の悪い投手を出せば、打たれて負けてしまう可能性が高まるのは目に見えてます。


メジャーリーグでは、同点の9回表にクローザーを出すのは当然のこととして行われています。解説者はしっかりしてほしいですよね。


ちなみにこの試合では、9回表に出てきたカブスのクローザーが打ち込まれたため、9回裏にリードした状態でブリュワーズもクローザーを出すことができましたが、これも打ち込まれ、クローザーが全然期待に応えられない試合になってました。