アポなし結婚式

先日結婚式に行ってきました。呼ばれてないのに。


結婚するのは僕の友達の妹。僕は昔からこの友達の家によく遊びに行っていて、何度も泊まってご飯もご馳走になっていました。そして僕が入院したときに、わざわざ車で病院までお見舞いにも来てくださいました。


普通なら友達の妹だからって結婚式に行ったりはしないのですが、お見舞いのお礼もできていなかったし、なんとか一言おめでとうと言いたくて、勝手に駆けつけることにしました。


僕は挙式や披露宴に出るわけではないので普段着でいいのですが、さすがに着飾った人たちばかりのところにトレーナーで行くのもどうかと思ったので、一応シャツとそれなりのズボンだけは履いて家を出ました。


電車を乗り継ぎ、最寄り駅で会場を確認し、しばらく歩くとそれらしい建物がありました。僕が歩いていくと、係の人が僕に話しかけてきました。


「○○家△△家の結婚式にご出席される方ですか?」
「いえ、呼ばれてはいないんですが、一言おめでとうを言えたらと思いまして…。」


係の人は名前を聞き、何やら確認をしていました。僕が申し訳なさそうに待っていると、係の人は言いました。


「是非、式に出てくださいとのことでしたので、ご案内します。」


僕はそういうつもりではなかったし、ネクタイもスーツも着用していないのでどうしようかと思いましたが、15分くらいの式に、一番後ろで参加するならまあいいかと思い、式に出ることにしました。


式はまさに始まるところで、すぐにチャペルに入ることはできませんでした。出席者は既にチャペルに入っていて、扉の外で新郎新婦が入場しようとしているのが見えました。


「新郎新婦が入場してしばらくしたら入っていただくので、もう少々お待ち下さい。」


僕は指示に従い、新郎新婦が牧師さんの前まで行って、みんなが前だけに注目しているときに、静かに後ろの方の席につきました。


家の外以外で見る友達の妹はきれいな花嫁さんになっていて、びっくりしました、式は淡々と進み、新郎新婦は永遠の愛を誓い、バージンロードを退場しました。続いて出席者も全員退場し、新婦がブーケを投げる段取りになりました。


ここで僕は友達に声をかけました。そしてお父さんとお母さんにも挨拶をしました。花嫁本人とも少し話ができ、僕は目的を達成しました。


引き続いて披露宴が行われるので、僕は披露宴会場にみんなが移動するのを見届けてから家に帰ろうと思いました。すると友達が言いました。


「来いよ。」


気がつくとお母さんが僕の左腕をがっちり組んで離しません。何ヶ月も前から連絡をとって出欠を確認するのが披露宴というものだし、呼ばれてもいないので当然僕は遠慮しました。しかしまったく聞き入れられることはなく、椅子を追加して料理も用意してもらえることになってしまい、なんと飛び込みで披露宴に出席することになりました。しかも親族のテーブルで…。


こんなことは初めてですが、まあいいかと思い、普通に披露宴を楽しむことにしました。


新郎はまったく知らない人だったので、新郎の生い立ちを聞くのも変な感じはしたし、カメラやVTRに自分が出席している映像が残るのもいいのだろうかと思いつつ、料理を食べていました。たまに酔っ払ったおじさんが、「いくつになった?」とビール瓶を持って話しかけてきたりするので、適当に話を合わせる場面もありました。当然ですが、ここに僕の知り合いはいません。


そんなこんなで披露宴は無事終了し、最後に新郎新婦とその父母が出席者を見送る段になりました。僕は新郎のお母さんにややこしい事情を説明したりしつつ見送られ、そして新婦側のお父さんとお母さんにもお礼を言って、帰ることにしました。しかしここでもまさかの展開が。


「うちおいで。」


え?さすがに結婚式があった家にその日に行くのは失礼すぎるので、僕は当然断りました。しかしそれはまったく聞き入れてもらえず、僕は一家と同じ車で友達の家に帰りました。いいのだろうかと思いましたが、普段遊びに行ったときのように家に入りました。


そしてなんやかんやしているうちに夜になったので、そろそろ帰ろうとしましたが、誰もそんなことは考えていませんでした。思えば僕がこの家に来て泊まらなかった記憶はありません。普通にパジャマを借りて、布団をひいてぐっすり眠ってしまいました。


翌日。


昼前に起きて、友達のお母さんが作ったごはんを食べてたら、友達の妹がやってきて一緒にご飯を食べることになりました。それだけでなく、昨日新郎新婦は二次会のあと、この家に帰ってきて寝たらしく、新郎も一緒でした。昨日はばっちり着飾っていた新郎新婦と、式の裏話なんかをしながら、パジャマで一緒にご飯を食べました。


そして少し休んだ後、友達のお父さんが作ってくれた弁当を携え、引き出物を片手にようやく帰路につきました。


ということでメチャクチャしてしまいましたが、お二人お幸せに〜。