人種

なんだか知らないけど夜中に目が覚めました。


まだ1時。起きるには早すぎます。だから寝たい。なにか眠くなる方法はないものか。僕は最近、ビデオを整理していて昔録画して完全に忘れていた映像を発見しました。それはサッカーW杯2006アフリカ予選ケニアvsチュニジア。僕はサッカー好きにもかかわらず、よく試合を見ている途中で寝てしまいます。なのでこの映像をベッドに寝転びながら見ることにしました。


再生っと。


時は2005年、ケニアはナイロビ。ドイツW杯に向けての戦いが始まろうとしています。ただ全体的に様子がなんだか変です。普通サッカーというと、試合前に先発メンバーなどの紹介があるものですが、この放送はいきなりキックオフから始まりました。さらにこの試合がどういう位置づけで、両チームがどのような立場なのかまったくわかりませんでした。なぜか客が誰もいません。


映像は乱れまくりで、音声も途切れがち。しかも、普通スポーツの試合というのは何台かのカメラが使われるものですが、そのうちの一つに、いつも白黒になってしまうカメラが混じっているようでした。ことあるごとに「現在映像が乱れております」というような字幕が出て、見難さに拍車をかけていました。


でもいいんです。僕は眠くなるためにこの映像を見ているのだから。退屈でよくわからないほど目的にかなっています。でも試合が始まって少し経ったとき、実況アナウンサーが言いました。


「白のユニフォームがチュニジア、赤がケニアです」


え?


僕はこの映像に関して、わからないことだらけでしたが、どちらの国がどちらのチームかはわかっていました。ケニアとうのは赤道直下、チュニジアはアフリカ北部で地中海に面した国です。全然人種が違うのです。


ケニアチームの人たちはいかにも熱いところの民族という感じの真っ黒い肌に短い髪の毛。一方チュニジアチームの人たちは肌の色もそれほど黒くなく、顔立ちにもヨーロッパの雰囲気を感じさせる選手たちがいます。


僕は瞬時に白がケニアで赤がチュニジアだと思いましたが、アナウンサーが言ったのは逆でした。おかしいなと疑念を持ちつつ試合を見ていると、開始早々赤のチームが先制ゴールを挙げました。しかしとても静かです。普通、サッカーでゴールが生まれると、観客席も放送席も大盛り上がりになるものなのに。観客がいないので観客席が静まり返るのは当然ですが、放送席まで無言です。


でも僕はなぜだかわかっていました。ようやくアナウンサーも異変に気付いたのです。とりあえず「赤のチームの選手がシュートを決めました」なんて言ってます。しばらくしてアナウンサーは言いました。


「情報では赤がケニアで白がチュニジアということだったのですが、逆のようです」


もしこれが日本代表とどこかの試合だったら、そんな情報があったとしても惑わされることなくすぐに異変に気付くはずですが、アフリカのチーム同士だから発見が遅れたのでしょう。


この後、いろんな情報が徐々に入ってきて、両チームのスターティングメンバーや両チームの勝ち点、監督の紹介や無観客試合になった理由などいろいろなことがアナウンサーによって説明されました。


ところで僕がサッカーが好きな理由はいくつかありますが、そのうちの一つは、「その国にどんな人たちが暮らしているかがわかる」ということがあります。


サッカーというのは世界中のほとんどの国で行われていて、FIFAにも世界中の国と地域が加盟しています。僕は小さい頃、外人というと白人と黒人の2種類かと思っていたくらいですが、サッカーを見ていると、世界には物凄く多様な人種がいることを実感します。


特に興味深かったのはアフリカで、アフリカ=黒人と思っていましたが、ヨーロッパからアフリカの赤道近くにかけて少しずつ人種が変化していくのを見ていると、とても感慨深い気持ちになります。人類の起源はアフリカと言われていますが、そこから長い時間をかけて移住を繰り返し、ノルウェーフィンランドに住む人たちはとても長身で色が白く、青い目をして金髪を生やすようになったんだな〜とか。サッカーを見る楽しみの一つです。


でも中にはあまりそういう意味で好きではない国もあります。国の政策によって左右されるところですが、長年その国の大地で培われた人種でない人たちで構成されてしまう代表チームというのもあります。その最たる国はフランス。移民が社会問題にまでなっている国ですが、サッカーの代表チームもそれを反映して、多くの選手が黒人選手になっています。それを見ていると、フランスの大地で作り上げられた人種というのがよくわからなくて残念な気もします。他にもイングランドも黒人選手が多いですし、逆に南アフリカは白人選手がいます。まあいろいろ事情があるから文句を言うつもりはないですけどね。


という感じですっかり眠気も吹っ飛んで、結局試合を全部見てしまいました…。