ALL #15

ALL #14 - 日記


新しい病棟で、新しい生活が始まった。


主治医は当然同じだけど、看護師さんは知らない人ばかりだった。でもそこはさすが看護師さん、初対面でも気持ちよく話をしてくれた。看護師さんは、検温や食事、治療のときなどに個室にやってきたが、お陰でそれはとても楽しみなものだった。


朝食を終えてしばらくすると、掃除が始まった。HCUにいたときは床の掃除をしにくるおばちゃんがいたけど、ここではそれに加えて毎日ベッド周りの清掃を看護師さんが別でしにきた。このときは部屋の外に出て清掃が終わるのを座って待った。同じ並びに他にも個室があって、たまに一緒に清掃が終わるのを待つこともあった。似たような病気の人たちだった。


これまではお風呂に入ることができず、2日に1度ほど体を拭いてもらっていたが、これからは病棟にあるお風呂に入れることになった。と言っても僕は足の付け根にカテーテルが挿入されていて、常に点滴がくっついている状態。果たしてどうやってお風呂に入るのかと思っていたが、それも看護師さんが教えてくれた。


個室を出るときはマスクをしなければならないので、マスクをしてお風呂まで移動。脱衣場で服を脱ぎ、自分だけが浴室に入る。点滴のぶら下がった点滴棒は脱衣場に残したままにし、引き戸を少しだけ開けてそこから点滴のルートを通す。こうしてお風呂に入ることが出来た。お湯を張って浴槽につかることはできないけど、半月ぶりにシャンプーをして体を洗い、シャワーを浴びることができた。とても気持ちがいい。病棟の人みんながそのお風呂を使うので、入浴は予約制。時間は30分以内だったけど、シャワーなのでそんなに時間はかからなかった。


久しぶりのお風呂から上がるとツメを切ったりヒゲを剃ったりしてとてもスッキリした。ただ足の付け根の挿入部は、さすがに動くと多少出血するので、消毒してガーゼを取り替えてもらった。することのない入院生活では、入浴は大きなイベントの一つとなった。


食欲はない状態が続いた。出てくる病院食を全く食べたいとは思えなかった。看護師さんから「ご飯が食べられないときにカップメンとか食べてる人もいるよ」と教えてもらったことがあって、なんで食欲のないときにそんなもの食べたいのかとそのときは思ったけど、それは本当だった。


感染を防ぐために食事は限られるのだが、カップメンのように滅菌されているものはOK。食欲のないときに、なぜかカップメンを食べ始めると箸が進み、モリモリ食べてしまった。普段はほとんど食べない物なのに。でも食後はなんだかむなしい気持ちになった。どうしてこんなときに体に悪そうなものばかり食べているんだろう…。


夜は部屋の電気を消して、窓の外に広がる夜景をしばらく見てから寝ることが多かった。窓の向こうではたくさんの人が、僕とはかけ離れた生活をしているのが奇妙だった。