ALL #14

ALL #13 - 日記


転棟の日。


いつものように朝を迎え、いつものように一日が始まる。いつものように時が過ぎ、昼食を食べた後トイレに行った。そしていつものように点滴棒を押して帰ってくると、看護師さんたちが荷物をまとめていた。もう引越しの準備は整っていた。


そのままベッドに寝ることもなく車椅子に乗せられ、10日間いたHCUの個室を後にした。2人の看護師さんが同伴してくれ、一人は荷物の台車を押し、一人は僕の乗った車椅子を押してくれた。他の看護師さんが「お大事に。」と言って笑顔で見送ってくれた。


「血液の専門の看護師さんがいるから。」


そんな話をしながら進む。トイレより先は未知の世界で、今までにほとんど見ることがなかった他の患者さんも目にした。どう進んでるのかもわからず押されるがままエレベータに乗り、扉が開くと、そこはこれから生活する血液内科の病棟だった。


ナースステーションに行くと、この病棟の看護師さんが待っていてくれた。


「よろしくお願いします。」


それと同時に、引継ぎが終わってHCUの看護師さんともお別れすることになった。あっけないお別れだった。このときはよくわからなかったけど、この先HCUの看護師さんを目にすることさえなくなるとは思いもしなかった。


新しい病棟の看護師さんは、僕を個室に連れて行ってくれた。一回り小さい個室には、ベッドの頭の方に大きな装置が置いてあった。それは少しでも細菌などを少なくするための空気清浄機であり、必要なものだけど、お陰で窓はほとんど塞がれていた。


このことも含めて、看護師さんから一通りの説明を受ける。HCUではうがいをするだけでも看護師さんを呼んでいたけど、ここでは患者自身に任される事が多かった。食後に飲む薬も、1週間分渡されて自分で管理することになった。HCUと違って水道も冷蔵庫もあったので、だいぶ楽にもなった。カメラもないし、一日中心電図を測られている状態からも解放された。手洗いとうがいを習慣づけるよう指導され、尿量も自分で測って記入することになった。


説明が終わって看護師さんが部屋を去ると、空気清浄機の音だけが部屋に残った。落ち着いて周りを見渡すと、HCUを離れた寂しさを感じるとともに、これから始まる長い生活の実感が湧いてきた。今度はどれくらいこの部屋にいるのだろう。もちろん、明日どうなってるかだって想像はつかなかったけど。