メジロ

メジロという鳥をご存知でしょうか。


先日テレビでやっていたのですが、この鳥が問題になっているようです。僕はその番組を見て、ようやく長年の謎が解けました。


僕は実は何気にアウトドア派です。いや、アウトドア派なんてきれいなイメージじゃなくて、もっと普通に泥臭い感じのことが平気で出来ます。特に学生の頃なんかは、釣りとか、生態調査とか、2週間くらい外にい続けることはよくありました。そんなときは大体、テントか車の中で寝泊りしました。


真冬に海の近くで寝たときは凍えそうだったし、警察の職務質問を受けたこともありました。だだっ広い野原にテントを張って眠りに着き、なんだかうるさいなと思って途中で目を覚ましたらモトクロス大会の会場だったこともありました。テントのすぐ横がコースだったので、バイクがコースアウトしてたら死ぬかもしれませんが、大会は普通に行われていました。


でもそんな中で一番驚いたのは和歌山でのできごとです。それはもう10年近く前のこと。僕らは釣りか何かで真夜中まで遊んだ後、寝る場所を探していました。手ごろな公園があったのでテントを張り、眠りにつきました。


僕らが目覚めたのは確かお昼近く。まぶしい太陽の光の中、おもむろにテントを出ると、たくさんの老人たちが黙って僕らのテントを囲んで座っていました。僕はまだ起きたばかりなので自分が寝ぼけているのかと思っていたのですが、それは現実でした。今までに見たことのない、異常な光景です。しかし老人たちに敵意はありません。どちらかと言うと僕らのことはあまり気にせず、何かに集中しているようでした。


そしてだんだん周りが見えてきました。よく見ると老人ばかりではなく中年の人なんかもいますが、男性ばかりです。彼らはそれぞれカゴの中に鳥を入れて手元に置き、順番に見せているような感じがしました。しかし以前としてその場は静まり返り、時折カゴの中の鳥が鳴くだけでした。


僕は結局まったく何が起こっているのか理解できませんでしたが、いつまでもそこにいるわけには行かないので、しばらくするとテントをたたんで立ち去りました。でも彼らが一体何をしていたのか、とても気持ち悪いままその後の日々を過ごすことになりました。


その後年月は流れ、僕は引越しをしたのですが、近くに妙な看板があることに気付きました。



僕は直感的に、あの公園での出来事を思い出しました。確かこの絵と似たような鳥がカゴの中にいた気が…。これって確か…メジロ…だったかな?


そんなことを思いつつ過ごしていた僕は、ようやく最近、テレビ番組で事の真相を知ったのです。


なんでも、この世の中にはメジロの鳴き声を競う人たちがいるそうです。その人たちはメジロを手塩にかけて育て、定期的に会を開いてその鳴き声の美しさを競います。声の美しいメジロは何百万円という値段で取引されることもあるんだとか。


ここで問題なのは、メジロが野鳥であるということ。メジロを飼うことには制限があり、都道府県によっては飼うこと自体が禁止されているというのです。いわゆる密猟によって捕らえられたメジロを何匹もこっそり家に飼っている人たちが、モザイク入りで映し出されていました。


番組の趣旨は、こういう悪い人たちを何とかしなければというものでしたが、僕は長年の謎が解けてとてもスッキリしました。でもまさかメジロ鳴き声大会の会場の真ん中で寝ていたとは…。世の中、まだまだ知らないことがたくさんありますね。