ALL #11

ALL #10 - 日記


急性リンパ性白血病
(Acute Lymphocytic Leukemia あるいは Acute Lymphoblastic Leukemia:ALL)


通常、赤血球や白血球などの血液細胞は骨髄で作られる。造血幹細胞という元になる細胞が様々な血液細胞に分化していく。しかしこの疾患では、造血幹細胞から分化したリンパ球前駆細胞に、分化する機能を失い、かつ無制限に増殖する性質を持ったものが現れる。いわゆる白血病細胞である。これらは急激に増殖して骨髄の中を占有してしまうため、必要な血液細胞が作れなくなってしまう。


これによって、様々な症状が出始める。例えば赤血球の減少により貧血が起こりやすくなったり、白血球の減少により感染しやすくなったり、血小板の減少により血が止まりにくくなったり。原因は不明だが、ALLは小児に多い白血病である。


ここまでは一般的な説明だが、更に細かいタイプに分かれる。遺伝子検査の結果、僕の場合はリンパ球のうちB細胞の染色体12番と21番の遺伝子が組み替えを起こしたことが原因ということだった。


もちろん白血病というだけで大変な病気ではあるが、タイプによっては予後が極めて悪いものもある。僕はそういうタイプではないということだった。


今後は、まず化学療法で白血病細胞をなるべく減らすことから治療を始めることになった。どちらにしても成人のALLは骨髄移植を視野に入れて治療を行っていくそうなので、その旨が伝えられた。


化学療法での最初の目標は完全寛解白血病が発症した状態では、体内に10の12乗個の白血病細胞があると言われるが、それを10の9乗個以下に減らすと、見た目の症状はなくなり、骨髄液を検査しても白血病細胞は確認できなくなってくる。この状態を完全寛解といい、最初の寛解導入療法により完全寛解へ移行できるかが予後にもかかわってくる。


化学療法では多剤を併用するのが一般的である。その中でもALLによく効くロイナーゼといういい薬があるそうだが、副作用の問題があるらしい。小児ではあまり副作用が出ないらしいが、成人ではアレルギーや膵炎をはじめとする副作用の危険があり、副作用が出た場合は治療方針を変えざるを得ない。使えるといいのだが、とにかくやってみるしかない。やることははっきりした。


医師は僕のいろんな質問にも丁寧に答えてくれた。変な言い方だけど、医師と話すのは楽しかった。この医師のいいところは、「○○の治療をさせてほしい」という言い回しをよくすることだった。患者自身の判断を常に仰いでくれたので、何かのプロジェクトを会議をして進めていくような感じがした。また答えるのが難しい質問をしても、なぜその質問に答えるのが難しいかを説明してくれた。とても物事への理解が深まった。


話を終えると、医師はパイプ椅子をたたんで部屋を出て行った。


そして寛解導入療法が開始された。