ALL #09

ALL #08 - 日記


入った部屋はHCU(ハイケアユニット)。準ICU的な部屋だそうだ。本来は血液内科の病棟の個室に入るべきだが、ちょうど空きがなかったので一時的にHCUに入ることになった。移動が終わるとすぐに左腕に点滴を刺し、血小板の輸血を始めた。


しばらくすると先ほどの医師がやってきて、正式に急性リンパ性白血病であることを教えてくれた。急性リンパ性白血病と言っても更にいろんなタイプがあるので、細かい分類をまだ調べているとのこと。だが少しでも早く治療に入りたいので、どのタイプであっても使うことになる抗がん剤を、もう今日から投薬したいとのことだった。当然お願いした。用意してあったエンドキサンとプレドニンが入れたばかりのカテーテルに繋がれ、体の中に入っていった。


それとともに、尿がよく出る薬剤も使った。初めて抗がん剤を投薬して効きすぎると、壊れた細胞の破片が大量に腎臓に来て詰まってしまうので、逆に怖いらしい。たくさん輸液も使った。それから抗がん剤の副作用である吐き気を抑えるため、あらかじめ制吐剤を入れた。その他にも血管内で血液が凝固してしまうのを防ぐ薬や抗生物質など、一気に十種類以上の薬が使われた。


しばらくすると血小板の輸血が終わり、左手が自由になった。ここで遅れた夕食をとることになった。気にもしなかったけど、今何時なのかなんてわからない。特に食事に制限はなかったが、数週間前から出ている咳が止まらないときがあり、途中で休んで、落ち着いたらまた少し食べるなんて有様だった。


また、足から入れてるカテーテルが気になり、体を動かすのが本当に辛かった。でも輸液や薬のせいでおしっこがすごく出るのでじっとしてるわけにもいかない。頑張って体を起こし、尿器に尿を入れた。この部屋は常にカメラで監視されているけど、もうそんなことはどうでもよかった。そして消灯時間になった。


次の日が来た。おしっこで何度か起きた以外はよく眠れ、採血のため起こされて目を覚ました。背中の痛みはやわらいでいるような気がした。朝食も普通に食べた。


程なく先生がやってきた。血液検査の結果は昨日より良くなっているとのことだった。血小板の値がグンと上がっている。尿もよく出ているしいい感じとのこと。ただ便が出ていないので、便をやわらかくする薬を追加することになった。また薬が増えた。


この日は昨日と打って変わって、ずっと病室にいた。何もせず、ただいろんな管につながれていた。病院にもよくわからず運ばれ、この病室にもよくわからず運ばれてきたので、自分が今いる場所がどこなのか全然わからなかった。この病室の扉の外に何があるかもわからなかった。窓とは反対の方を向いて寝ていたので、窓があることにさえなかなか気づかなかった。


夕食も普通に食べて、久しぶりに歯を磨いた。大便以外は部屋の外に出ることを禁じられていたので、食事を運ぶのは看護師さん。歯を磨くときも、大きめのコップに水を入れてきてもらったし、口をゆすいだりした後の水は別の容器に吐き出した。


僕が入院したのを聞いて会いたいと言ってくれた人もいたけど、感染が怖いのでなるべく面会は避けるようにと言われており、申し訳ないけど断った。残念だけど仕方がなかった。