ALL #08

ALL #07 - 日記


「非常に厳しい話をしなくてはなりません。」


医師は切り出した。


「アンケートにも本人に言って欲しいと書いてありますし、お話します。病名は急性白血病です。」


窓のブラインドから西日が差していた。僕は「そうか」と思った。今までと全然違う、新しいことが始まったのだなと思った。僕の反応を見て、医師は話を続けた。


「これには大きく急性骨髄性白血病急性リンパ性白血病の2種類がありますが、今のところ急性リンパ性白血病の可能性が高いです。どちらであるかは今急いで調べています。」


僕はもうその医師のことを信頼していた。職業とはいえ、僕の体のことを真剣に考えてくれる人がいることは僕を安心させた。


白血病と言われると、死の病というイメージを持たれますが、今は5〜6割の人は治ってらっしゃいます。半年は治療に要しますが、一緒に頑張って行きましょう。」


僕は、もうすぐ死ぬ可能性があるんだなと実感した。少なくとも半年は今までと違う世界に行くことになる。それは不思議な感情だったけど、だからと言って僕自身の何かが変わるわけではなかった。


とりあえずやれることをやるだけで、その結果死ぬこともあるし、生き残ることもある。僕はその結果に従うしかない。僕は何をすればいいのかわからないときは不安になるけど、やることがはっきりしているときはあまりいろいろ考えたりはしない。だってそれ以外どうしようもないんだから。では僕は何をすればいいのか、医師の話の続きを待った。


医師は、すぐにでも治療を行いたいので、血小板輸血をすることと、中心静脈カテーテルを入れることをお願いしたいと言った。血小板輸血は前の病院にいるときから言われていたことで、中心静脈カテーテルは様々な薬剤を点滴で入れるために必要な管。今後長期にわたってたくさんの薬を使わなければならないので、いちいち点滴を刺すのではなく刺しっぱなしにする。血管の壁が厚く、心臓に近い大静脈から入れるのがいいそうだ。話が終わると早速処置にかかった。


まずはカテーテルの挿入。このカテーテルは、本来鎖骨の下辺りから入れたいところだが、血小板の値が低いため足の付け根から入れることになった。そこから心臓の近くまで通すらしい。この処置はもう一人の若い先生がしてくれた。彼女は淡々と作業を行った。足の付け根の静脈にカテーテルを通し、外れないよう管を皮膚に3箇所縫い付けて固定する。誰か知らない看護師さんの手をぐっと握って耐えた。レントゲンを撮って、カテーテルがちゃんと入っていることを確認すると、ベッドに寝たまま個室に移された。