ALL #05

でも朝は来た。久しぶりの朝のような気がした。


また同じように病院に行くと、また警備の人がすぐに通してくれた。待合のソファでうずくまりながら待っていると、9時頃に順番が来た。


診察室に入ると、昨日の夜に診てもらった先生だった。説明が要らないので助かった。夜中のことを説明すると、とりあえず胃酸を抑える薬を点滴しようということになり、別の治療を行うということで期待した。


別の部屋に移動し、ベッドに横になって1時間の点滴を始めた。でもお腹の痛みは変わらず、途中で横になることもできなくなり、うずくまってしまった。それを見た先生はとうとう言った「入院しよか」。同意した。


点滴をつけたまま、すぐにレントゲンやCT、心電図、エコーなどの検査を行った。今何時かとかそういう概念はまったくなかった。そして病棟に移された。一般病棟に空きがなかったのでとりあえずICUに入れられ、今日だけそこで寝ることになった。


そしてすぐに点滴が変えられた。あの「朦朧としてくるから入院しないとできない強い鎮痛剤」だった。そのヘキサットという薬を入れると、確かにフワッとなり、眠くなり寝てしまった。


どれくらい寝たかわからないけど、目が覚めたとき、まだ外は明るかった。痛みはなくなってはいないけど、明らかにやわらいでいた。


だけど、夕方になるとまた痛み出した。看護師さんに同じやつをもう一度頼んだら、もう少し時間を空けないと…と言われたけど、早めに今度は筋注をしてくれた。その夜は特に何をすることもなく寝ていた。


次の日になると、痛みは継続的なものから断続的なものに変わり、程度も弱くなっていた。用心のためもう一度ヘキサットを頼んだけど、看護師さんが「顔色いいからまだ大丈夫ね」というので我慢した。


この日は「胃潰瘍の疑いあり」とのことで胃カメラをしたが、胃はなんともなかった。だけど検査の後トイレに行ったら血便が出た。絶対安静で詳しい検査が必要ということになったが、検査は週明けまで待ってくれとのことだった。一刻も早く詳しい検査をした方がいいのにあと2日間何もせず待たなければならなくなった。


しかしこの後次第に痛みはなくなり、週末のうちに表面的にはなんともなくなった。食事も取り始めた。結局週明けにも検査はせず、入院した日から5日後に退院することになった。主治医は虚血性大腸炎じゃないかと言ったが、どっちかというとはっきりわからないという感じだった。たぶんそういうのじゃないんだろうなと思った。薬剤師が来て、薬の説明をし始めたので、薬は要らないと言ったら薬はなしになった。そして退院したその日の午後から会社に行った。


ただ、退院後も体調の悪さは相変わらずで、根本的に何も変わっていない気がした。母親と会う機会があったので、父親が死んだときのことを初めて聞いてみると、今回の自分に当てはまる部分があった。また、主治医との話の中で「体重が急に落ちたとき、私たちはまず大きく3つの病気を疑います。糖尿病、癌、そしてうつ病です。」という言葉も頭に残っていた。


僕は再度そのことを話しに病院を訪れた。


今度は膵臓をもう少し重点的に見てみようということになり、専門医に見てもらった。その茶髪の専門医は、ちゃんと見るには造影CTをしなきゃいけないけど、「この歳で膵臓癌なんて普通ならないよ」「お父さん、お酒めちゃくちゃ飲んだんじゃない?」などと言った。「僕のエコーは普通の人がやるエコーとは違う」というエコーをやってもらい、なんともないということになった。


結局、体調の悪さを自覚して、なんとか原因を見つけようとしているのにどうしようもなかった。もう僕には何かを待つしかなかったのかもしれない。そんな風にして僕は3月を迎えた。