ALL #07

転院先の病院は思ったより近かった。車中では普通に周りを見る余裕があり、普段よく通る路をいつもと違うところから見るので不思議な感じがした。よく通る路から知らない路に入ったと思ったら、病院が現れた。転院先の病院は前の病院より広くてきれいな感じがし、緑もたくさんある印象だった。救急用の出入り口に車を横付けし、中に入ると段取り良く看護師さんが待っていた。


最低限の手続きと簡単な説明を受けたが、受診に際するアンケートのようなものがあり、「もしあなたが命にかかわるような病気だった場合、告知を希望しますか?」というような項目があった。「希望する」に○をし、最後の「他に何かありましたらお書き下さい」という欄に、「すべて包み隠さず教えて下さい」と書いた。


それを終えるとすぐに診察室に通された。中には一人の医師がいた。「ええ先生」だ。彼はマスクをしていて表情は限定された部分しかわからなかったが、まじめに仕事をする人だという印象を持った。第一印象で人は判断できないが、人を判断する上で第一印象というのはとても大きな手がかりとなる。医師は前の病院でのデータを確認し、僕は自分の知っている事実をなるべく丁寧に説明した。


すべての情報を頭に入れた医師は、同じような検査をやることになるものもあると思うが了承してほしいと言った。人から聞いた話を鵜呑みにするのではなく、自分の目で確認するのは当然のこと。直ちに了承した。そして医師は付け加えた。「こういう検査結果が出ているからと言ってすぐさま白血病だということは言えないし、とにかく大至急調べましょう。」


まずは血液検査のための採血。いつもより長い時間かかった。それから心電図測定やレントゲン撮影をするため院内の別の場所に次々と連れて行かれる。最初の診察室に戻ってきたときには血液検査の結果が出ていた。その結果から、骨髄液を調べることになった。血液検査では、もっと詳しい検査をする必要を否定できなかったということだ。医師は「ちょっと痛いけど我慢して下さい。」と申し訳なさそうな表情をしながら、これからする検査の説明をした。


骨髄液を採取するには、骨髄穿刺(マルク)をする必要があった。僕は処置用のベッドにうつ伏せになり、腰骨が出るようにズボンと上着をずらした。腰に麻酔をされた後、「ボールペンの芯ほど」の針が骨髄に突き刺された。そして骨髄液が吸い取られた。出血を抑えるため30分ほど安静にする必要があり、仰向けになって、ただ天井を見つめた。なぜかとても落ち着いたような気持ちだった。大変なことになってるかもしれないのはわかってるけど、なんと言うか、今まで知らなかったところにポンと放り込まれたという好奇心のような感触があった。


安静が終わると造影CTを撮ることになった。点滴で造影剤を入れながらCTスキャンをするというもの。通常のCTより詳しい情報が得られるが、その分危険は増す。造影剤を入れる際、体が熱いような感じがすると思うが大丈夫だという説明があった。時間的には短く、熱い感じというのはほとんどしなかった。これで検査は終わったらしく、ベッドに横になって検査結果が出るのを待った。


そして再び診察室に呼ばれた。